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白い石造りの巨大な教会。
そこの敷地内で生まれ育ち、今は「神の声」を聞く職務に就いている神官。
彼には自分が生まれる前の、前の、前……
繰り返す輪廻の度に、出会う運命にあるとされる男性がいた。
その相手は「堕天使」だった。


 【ユルクスス】
ユルクスス。一人称:私。神の声を聞き、それを皆に伝える役目を持つ神官。
運命の相手である「堕天使」がいて、名前はアルディエル(うるいさん宅)。
心優しく、物腰も柔らかい。
一般的に見ると、世間知らずなところがある。
聖職者である自分が、堕天使と関わりを持つことに後ろめたさを感じながらも
運命には逆らえず、次第に仲を深めていく。

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>以下で細かいこと


ユルクススは教会の敷地内で生まれて以来、敷地より外へ出たことが無く
教会内での整えられた常識しか持っていない。
加えて本来の優しい性格も相まって
相手を疑ったり、悪く言ったりすることをしない。

堕天使と出会ったときも、彼の素性を知った上で
決して詰問したりはせず、部屋へ招き、食事を与えるなどした。

堕天使は名前をアルディエルといった。
ユルクススは「運命の相手」とはどういうことなのかと、彼に尋ねてみた。
曰く、彼は滅びない身体故に数え切れない年月を生き続けており
その間、ユルクススが輪廻転生を繰り返す度に
居場所を探し、出会い、寄り添い、死ぬまで見守り続けてくれたのだそうだ。

しかしユルクススには生前の記憶など一切残ってはいない。
もちろん彼の顔に見覚えも無い。
信じがたい話ではあったが、嘘だと判断することもできない。
ただ、「ユルクスさんー!!」と明るく呼びかけてくる彼に
邪なものを感じ取れないことは確かだった。

徐々に彼と会う時間が増えていった。
話を聞くと、様々な思い出話を披露してくれた。
婚約指輪も全て取ってあると、一つ一つ見せてくれた。
頭に飾っている青い花も、過去のユルクススが贈ったものなのだそうだ。
楽しそうに話す姿を見ながら、こちらは何も覚えていないことに
密かに心を痛めていたが、彼は全然気に留めていない様子だった。
逢瀬の時間はやがて、大切なものの一つになっていった。

ユルクススには気がかりなことがあった。
聖職者であり、神の御前で御声を頂く立場にある自分が
果たして堕天使と関わりを持っても良いのだろうか。
過去になんらかの理由から破門、追放された者がいるという話は聞いたことがある。
さすがにそこまで問われるかはわからないが、少なからず問題になるのかもしれない。

幾らか月日が流れ、ついにユルクススはある懸念を抱えるようになる。
気のせいではなく、神の声がだんだんと聞き取りにくくなってきていた。