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寮生活の少年の所へ、家庭教師が週に数度来ることになった。
お互いにそれぞれ家族環境から満たされていない心を抱えており
似た傷を持つ者同士、仲が深まって行く。
ただ教師の少年への気持ちは、次第に恋心へと変わっていってしまう。


 【シェノ】
シェノ。一人称:ぼく。小学生。
ところどころに敬語が混じる。
純粋で正直者、わがまましない子だけど、イオ先生にだけは言ったりする。
胸のリボンと髪を結ぶリボンが特徴のリボンっ子。アイスが好き。

 【イオラル】
イオ先生。一人称:私。アルバイト家庭教師。
押しに弱いヘタレ。
シェノのことが好き。
好きだけど言えなくて、触れたいけど触れられない。
自分のこの気持ちは正しくないと思っている。
呼び方は「イオ先生」だけど
家庭教師のアルバイトをしているだけで、本職は服飾業。テーラー。

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>以下で細かいこと


ある冬の日、イオラルは住んでいるマンションの階段で、ラベルの剥がれた一本のビデオテープを拾う。
不審に思いつつも部屋で再生してみると、それはごく短い無音のホームビデオだった。
それを観ながらイオラルは自分の家族の事を思い出す。
不安定な母親との暮らし、父親の助けで逃げるように家を飛び出したこと。
自分の家にはこのようなテープは残っていたりするのだろうか。
その日からというもの、このテープの事が頭から離れなかった。
カメラに向かって笑いかける子供、あの映像が無音だったのを補うように
耳には自然と道行く子供の笑い声が届き、視線は駆けて行く小さい影を捉えていた。
そんな数日の後、イオラルは街で小学校の家庭教師アルバイトの広告を見つけ、その場で番号に連絡をする。
寮生を相手に教える、といった内容で、すぐに教師を交えての面談が決まった。
ごく衝動的なものだと自分でも理解していたので、
2、3ヶ月の期間が終われば、このよくわからない気持ちも収まっているだろうと、思っていた。

シェノは幼い頃に父親と離れてしまい、母親・祖父母と暮らしていたが、早くに母親を亡くしてしまった。
以来祖父母との暮らしが続いたが、今の小学校は通学距離の関係で寮に入っている。
特に成績が遅れているというわけでもなかったが、丁度周囲で受講生徒が増え始めていたのと
教師から勧められたというのもあり、流されるまま家庭教師受講の志願書を出す。


>その他


本気でシェノに惚れてしまい、歳の差故に思い悩むイオ先生。
初めて恋人として愛してしまったのが、少年だった。
その少年はきっと自分に親の愛を求めているだろう。
彼には一番欲しいものをあげたいのに、自分にはあげられない、そんな先生目線がメイン。
シェノが私を通してみているもの、私に望んでいるものが分かってしまう。
それはかつて、自分が欲しかった物だからだ。
ここまで惹かれなければ、もしかしたら応えてあげられたかもしれない。
だけど今の私にはもう出来ないだろう。
こんなはずじゃなかった、こんなに好きになるなんて思っていなかった。

イオ先生の母親は精神がやや不安定で、
子をずっと自分の傍に置いてどこにも行かせないようにしていた。
そういった行為の一つとして、イオ先生が小さい頃に無理矢理ピアス穴を開けている。
イオ先生のピアスは、最初は銀色のピアスだった。大人になってもずっと外せないでいた。
付けているピアスは、後に赤っぽいものに変わる。
シェノと出会ってしばらく経った頃、自分の手でシェノの瞳と同じ珊瑚色のものに付け替える。
楔ではなくて、よすがになる。
また、よく引越しを繰り返す家庭でもあった。
今先生が住んでいる部屋はかつて一時期住んだことのある部屋。
まだどこかで家族を夢見ている。

シェノは家族以外との暮らしが長かったため
学校でも肩身が狭く、交友範囲は親しい子が数人いる程度。
祖父母は優しく品行方正な人達だった。
シェノもそんな性格になっている。なのでちょっとだけ敬語を使おうとする。
祖父母との生活に表面上は何も不満は持っていなかったが、
やっぱりどこかで寂しく思っている。
寮生活になり、その気持ちは少しずつ高じていく。

舞台はバルセロナなイメージ。冬。